Architecture
ミニマムに暮らす恵比寿の狭小住宅は
都心のキャンプ場…!?
「都心に住むならば、狭い土地で縦方向に建てさえすればマンションと値段はあまり変わらないでしょう。だったら、戸建てのほうが楽しく暮らせるんじゃないか」
狭くてもいいから都心に住む。しかし、その“都心”というのが、“六本木、西麻布から中目黒まで”とかなり限定的だった。それで、結局、この土地に出会うまでに、長井さんの独身時代から足かけ7年ぐらいを要したという。
みんなが集まれる家
都心にこだわったのは、もともと恵比寿あたりで飲んだり食べたりして友だちと遊ぶことが多かったから。
都心にこだわる理由は他にも。「友だちと飲んだりした帰りにみんなが気軽に立ち寄れる家にしたい。それだったら都心にそのための基地みたいなものを構えようと」
建築家の納谷さんには、自分たちのライフスタイルと、屋上でも人が集まって飲んだり食べたりできるようにしたい、家の前に駐車スペースが欲しいという希望を伝えた。この他は、基本的にお任せ。「自分のライフスタイルを伝えれば、あとは具体的にプランを提案してもらえるだろう」と、クルマはでき上がった駐車スペースに合ったサイズのものを買うという逆発想だった。
ミニマムに暮らしたい
長井家のライフスタイルとして建築家に伝えたことのひとつに“ミニマムに暮らす”というのがあった。「無駄なものが好きじゃないので、余計なものがないミニマムな生活をしたいんです」と奥さん。もともと、モノにこだわってなかなか捨てられなかったり、コレクションに凝る人だったら狭小住宅という選択はなかったかもしれないが、その点、2人とも徹底している。納谷さんにデザインを依頼したのも、長井さんいわく、「デザインすべてに理由があって、無駄なところがない。自分と価値観が同じ感じがしたから」だった。
「購入するときに十分に吟味して、 本当に必要で気に入ったものしか持たないようにしています。あと、モノを集める趣味を持たないようにしています」と長井さん。
しかし、こう言う長井さんに、奥さんが「でも集めてるじゃない」と一言返す。キャンプ用のテントのことだ。色や構造、大きさの異なるものが7つもあるという。
“キャンプ熱”が高じて
夫妻は、自然の中での開放感ととともに、都心でのハードワークで疲れた心身へのリフレッシュ効果を求めて、7月には4週連続で週末にキャンプへ行ったという。
このキャンプ熱、アウトドア熱は、この自邸にも持ち込まれている。家の中にキャンプ場をつくっちゃったんですと見せてくれたのはサンルームにテントを張った写真だった。
このサンルームに泊まることはないそうだが、屋上ではテントを張って寝ることも。「金環日食のときには2日続けて泊まりました」。テントの中にテーブルを置いて、料理もつくったという。
わざわざ寝室のある自邸の屋上にテントを張って寝るのは? の質問には、「トリップ感がある」(奥さん)、「家にいながらアウトドアを楽しむ」(長井さん)との答えが返ってきた。
当然ながら、長井邸のメインコンセプトだった「人の集まれる家」のパーティは、まずは屋上からスタートする。屋上でお酒を飲んだりバーべキューなどを楽しんだ後に室内でゆっくりとくつろぐのだという。
設計 納谷建築設計事務所
所在地 東京都渋谷区恵比寿
構造 鉄骨造+RC造
規模 地上3階地下1階
延床面積 61.67m2