Architecture
家族の思い出を奏でる家の中にトンネルが出現!
遊び心を散りばめた独自の空間
個性を放つテイストに一目惚れ
都心からのアクセスも良く、駅前の都市開発が進む神奈川県・海老名。結婚6年目を迎える佐藤大輔さんと絵理香さん夫妻は、結婚当初からこの地でアパート暮らしをしていたという。愛娘・結南(ゆな)ちゃんの幼稚園を変えたくないこともあり、慣れ親しんだ地で一軒家をもつことを決めた。
「マンションは全く頭になかった」とは大輔さん。「建物丸ごと全てが自分のモノというのに憧れていたんです」。
「はじめは建売住宅でもよいと思っていました」とは絵理香さん。近辺で土地や住宅を探し始めて1カ月足らず。結南ちゃんが通う幼稚園に程近い、建築条件付きの土地に出会った。指定された施工会社のショールームに足を運んでみると、一般的な住宅とはひと味違うテイストに惹き付けられたという。「それまでにもモデルルームなどをまわっていたんですが、いままで見たこともないヴィンテージ調の独特の雰囲気に、“めっちゃカッコイイ!”と一目惚れ。この会社、『ライフ・ステージ』さんに家を建ててもらいたいと思いました」(大輔さん)
完成した家は、真っ白い壁に施されたデザインコンクリートや木材で囲んだベランダ、アイアン素材を効かせたエントランスなど、外観からすでに異彩を放っている。
憧れのカフェ風キッチン
「設備や仕様など細かいところまで決めていく作業が最も楽しかった」と振り返るご夫妻。毎週のようにショールームに通い、4カ月にわたって打ち合わせを重ねた。「ショールームでは、素材の質感や雰囲気を実際に見たり、触れたりできるため、仕上がりのイメージがしやすかったですね」。木材やアイアンを主流としたナチュラルで素朴な雰囲気やヴィンテージ家具とのバランスなど、ヒントをたくさんもらったという。
絵理香さんがショールームで最も惹かれたのは、カフェ風のキッチン。「アパート時代から、自宅のキッチンをカフェ風にアレンジしては、家を購入したら……とイメージを膨らませていました」。ガラスモザイクタイルを貼った美しいキッチンカウンターや、木をふんだんに使ったあたたかな雰囲気は絵理香さんのイメージにピッタリはまり、そのまま採用した点も多い。
キッチン内は、「子どもと一緒にお料理ができるように」と広めのスペースをリクエスト。現在、率先してお手伝いをしてくれる結南ちゃんとの料理づくりを楽しんでいる。
ワクワクする仕掛け
ショールームでは、楽しい仕掛けも提案していた。なかでも“トンネル”は、結南ちゃんの大のお気に入りに。「トンネルの家に行くよ、と言うととても喜んでいました。新しい家には、子どもが希望することも盛り込みたいと思っていたので、娘のリクエストである“トンネル”を造ることにしたんです」(絵理香さん)。
取材の日に出迎えてくれた結南ちゃんが真っ先に連れて行ってくれたのが、廊下に登場した、赤レンガをモチーフにした“トンネル”だった。トンネルがある家は珍しく、結南ちゃんにとっても自慢の場所のようだ。
また、トンネルの脇の壁に埋め込まれた本棚にも仕掛けがある。実は扉になっていて、扉の奥には隠し部屋が。現在は、大輔さん念願の書斎となっている。2畳ほどのコンパクトなスペースが集中力を高めてくれるそうだ。
その扉の横には、黒板マグネット塗料をペイント。お絵かきをするだけでなく、マグネットでメモを貼り付けることもできて重宝している。また、2階には、秘密基地感覚のロフトを設置するなど、大人も子どももワクワクするような仕掛けが随所に散りばめられている。
自然素材にひと手間加えて
「素足で過ごしても気持ちがいい」と無垢材の床をはじめ、外壁・内壁ともにフランス漆喰を使用するなど、佐藤邸では質の高い自然素材を使っている。さらに、特殊な液体を塗った杉板の壁やワイヤーブラシをかけて古材風にした建具など、ひと手間加えた仕上げが他にはない独自の空間を造り出している。
リビングの天井に取り付けた梁は、家族みんなでエイジング加工を施した。その際、大輔さんが“ゆな”ちゃんの名前をこっそり刻んだ。
また、玄関で出迎えてくれるのが、漆喰壁に付けた“家族の手形”。「こんなに小さい手は今だけですから。良い記念になります」と微笑むご夫妻。訪れた人の表情をもやわらげてくれる。
建築中の作業に参加することで、一緒に建てたという思い出を残し、一層愛着が深まる家になった。
住み始めて1カ月。古材風の素材やヴィンテージ家具により、「真新しい家より落ち着く」と話す大輔さん。時を経てさらに味わいが増す自然素材と遊び心を刺激する空間で、自分たちらしい暮らしの味付けを楽しんでいかれることだろう。