Architecture
多摩川のほとりに暮らす光、風、緑を取り込む
癒しと心地よさに満ちた家
![181217H_head02 181217H_head02](https://img.100life.jp/2018/12/30203712/181217H_head02.jpg)
空気が流れるダイニング
「外と中が混然と一体となっている空間が好きなんです」。
スタジオ CYの堀内犀さん・雪さんは、3年前多摩川のほとりに自宅兼アトリエを建てた。
「都心の暮らしには少し息苦しさを感じて。光が入り、風が抜けて、緑が溢れる、そんな場所を求めていました」。
見つけたのは、都内にありながら広々とした河川敷が目の前に広がり、どこまでも土手が続く土地。
「目線の高さに緑があり、部屋の中まで流れ込んでくる、ここは私たちにとって理想的な場所でした」。
この贅沢な環境をいかに暮らしに取り込めるかが、設計のテーマだった。
「長方形の細長い敷地なのですが、どこの空間にいても気持ちよく過ごせるよう、多摩川に面した側に開口部を大きくとり、中庭、裏庭も設けました」。
中庭を挟んでコの字型に配置された建物は、家中を光が通り抜け、どこにいても緑の気配が感じられる。
「1階はダイニングであり、ミーティングスペースであり、エントランスです。いずれはカフェにしても、と考えているのですが、誰もが気軽に入りやすいよう靴のまま入れる土間にしました」。
奥につながるキッチンで犀さんが淹れるコーヒーの香りが漂うダイニング。時折、外を歩く人がふとこちらを覗き込む。シダーウッドの外壁の一軒家は、何気なく目を向けてしまう、そんな魅力的な佇まいを見せている。
![](https://img.100life.jp/2018/12/04114344/181217H_01-02-re-700x466.jpg)
![イギリスのアンティークのダイニングテーブルに、ルイス・ポールセンのペンダントライトを。](https://img.100life.jp/2018/12/30125036/181217H_02l-350x525.jpg)
![壁の一部は外壁と同じ素材を用いることで、外との連続性を持たせている。緑の棚はDIYで作成したもの。](https://img.100life.jp/2018/12/30125052/181217H_02r-350x525.jpg)
![](https://img.100life.jp/2018/12/07142326/100-350x525.jpg)
![アオダモ、ナツハゼなどを植樹したタイル張りの中庭からダイニング側を望む。土手の緑も視界に入り込んでくる。](https://img.100life.jp/2018/12/30125128/181217H_03r-350x525.jpg)
![犀さんの希望を反映したオープンキッチンは、素材感を大切にインダストリアルな雰囲気に。手前のステンレスのトップの上には古材を渡し、キッチンとパブリックスペースを視覚的に区切った。](https://img.100life.jp/2018/12/30203930/181217H_04-02-700x467.jpg)
![業務用のサイフォンで香り高いコーヒーを。ペンダントランプは英国製。](https://img.100life.jp/2018/12/30125211/181217H_05l-350x525.jpg)
![駐車場から入ってすぐに手が届く位置にスイッチを設置。造作の棚で収納力も高めた。](https://img.100life.jp/2018/12/30125224/181217H_05r-350x525.jpg)
癒しと高揚感のセミパブリック
「やりたいことをプランに落としていったので、動線がよく暮らしやすい家になりましたね」。
1階のパブリックスペースから、2階のアトリエのあるセミパブリックスペースへは、インダストリアルな雰囲気のキッチンから連続するように、スチールの手すりの階段がつなぐ。アトリエ兼リビングに足を踏み入れると、土手の緑が眼前に。
「ここで仕事をする時間がいちばん長いんです。大きな開口部を設けて開放的にしつつ、でも全面開口では落ち着かないので、土手を歩く人から見て腰下のラインを隠すように、バルコニーを設けました」。
窓のサッシには縦ライン、横ラインをリズミカルに配置することで、より外の景色を楽しめるように。
「家を小さい部屋で仕切りたくなくて。収納庫は上から吊るす構造にして浮遊感をもたせました」。
犀さんの趣味の物入れとして活用している収納庫は、板張りの箱が宙に浮かんでいるかのような仕掛けに。その下にはスリットが設けられ、1階へ光を送る。そして数段の階段と廊下の向こうにバスルームが。
「北側の床のレベルを少しずつあげることで、多摩川を見下ろせるように考えました」。
アトリエより少し高い位置にある大きなガラス窓のバスルームは、中庭に面していて風が抜け、光がたっぷり入る。床にあしらった十和田石や、洗面の大理石など天然の素材が非日常感と癒しを与える。
![アトリエ兼リビングは、あえて天井を仕上げず、デッキプレートやエアコンをそのまま見せてファクトリーっぽい雰囲気に。ミニキッチンも備え、景色を眺めながら雪さんは毎日ここで仕事を行う。](https://img.100life.jp/2018/12/30125319/181217H_07-700x469.jpg)
![格子状のサッシが、正面に広がる多摩川の景色を切り取る。テーブルは都内のインテリアショップで見つけた。](https://img.100life.jp/2018/12/30125336/181217H_08-700x467.jpg)
![犀さんの趣味の道具の収納庫は、下部にスリットを設け浮遊感を出した。板張りがまた違う趣きを添える。](https://img.100life.jp/2018/12/30125352/181217H_09l-350x525.jpg)
![キッチンからインダストリアルな雰囲気がつながる。アトリエから少し段差を設けることで、北側から多摩川を見下ろす感じに。](https://img.100life.jp/2018/12/30125404/181217H_09r-350x525.jpg)
深呼吸したくなる3階テラス
3階にあがると、土手の向こうに広がる河川敷や川面までが見渡せる。
「ここは完全にプライベートなのでリラックスできるように素材を選びました」。
床材は、1階のキッチン側にウォールナット、2階はオーク、3階にはアッシュ材と、上に行くほど明るい色彩に変化。最上階の3階は最も明るくシンプルな空間に、シースルーの緑のカーテンなど、ほどよく取り入れられたファブリックが爽やかさを演出する。
「ここからお天気のいい日には富士山も見えますし、夏は花火大会も楽しみです」。
ベッドルームのまわりにL字型に設置されたテラスに出てみると、外の景色に吸い込まれるよう。
「遠景の緑とのつながりを出すために、テラスに芝を敷いてみました。朝、ここに出て深呼吸をすると気持ちがいいんですよ」。
自然をたっぷり享受しながら心地よく暮らす、そんな日常を可能にするアイデアが溢れていた。
![天然の芝が遠景とつながる3階のテラス。遮るもののない景色が広がる。照明はインゴ・マウラー。](https://img.100life.jp/2018/12/30125502/181217H_11-700x474.jpg)
![シンプルで清潔感のあるベッドルームには、お気に入りのアートなどを飾る。ニッチ右上のピンクと白の作品は、現代美術作家・森内敬子さんのもの。](https://img.100life.jp/2018/12/30125516/181217H_12-700x467.jpg)
![クローゼットの扉面にはシナベニヤに薄いグレーを塗装。春夏秋冬の衣類を1年分整然と収められ、衣替え要らず。](https://img.100life.jp/2018/12/30125538/181217H_13l-350x233.jpg)
![窓やスリットから光がいっぱい入る。カーテン替わりに洋書を利用して目隠しに。](https://img.100life.jp/2018/12/30125551/181217H_13r-350x233.jpg)
![ベッドルームと同じ床のレベルでつなげたテラス。素足で出ても気持ちがいい。](https://img.100life.jp/2018/12/30125615/181217H_14l-350x525.jpg)
![中庭を囲むコの字型の建物。どの部屋からも他の部屋の気配が感じられる。](https://img.100life.jp/2018/12/30204029/181217H_14r-021-350x525.jpg)
おふたりの「多摩川の家」は見学も可能。気軽に連絡すれば、風通しのいい空間、心地よい素材感を実際に体感させてもらえる。