Design
ミラノ・サローネ特集2014 -1-エコ×個性×テクノロジー
木とデザインの世界
![ミラノ・サローネ特集2014 -1- エコ×個性×テクノロジー 木とデザインの世界 ミラノ・サローネ特集2014 -1- エコ×個性×テクノロジー 木とデザインの世界](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone.jpg)
ミラノ・サローネ2014現地レポート、第1回のテーマは「木とデザイン」。昨年に比べ、会場では木を素材としてフィーチャリングした展示が多く見受けられた。エコロジー意識の成熟を示すと同時に、経済不況にあって時代の気分が自然回帰、懐古嗜好に向かっているのだろう。しかし、単に昔返りではつまらない。高いデザイン性で個性を浮き立たせ、最新の技術で機能性と表情に磨きをかける。小さな地方メーカーが殊更パワーを発揮していたのが印象的だった。
Morelato モレラート
自然の木を芸術に高め
自然にはない表情を作り出す
モレラート社のモットーは、「芸術を考え、手で作る」こと。北イタリアのヴェローナ近郊で、木彫家具の工房からスタートした同社は、職人仕事と芸術作品の境界をなくすことに独自のスタイルを見いだした。ルネサンスの絵画、彫刻はそもそも職人たちが技術の粋を極めたことに端を発する。モレラートの姿勢はルネサンス精神であると言っても過言ではないだろう。マリオ・ボッタやピエロ・リッソーニ、マウリツィオ・ドゥランティといった建築家とのコラボレーションが今回の目玉であり、木という自然の産物がそのままでは持ち得ない表情を与えることが、モレラート社の目指すところだ。同社は毎年デザインコンクールを催し、その優秀な作品は同社が営むアルド・モレラート財団のミュージアムMAAMに展示される。
![ポルトローナ「CHAISE MORELATO」Mario Bottaデザイン](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_002-700x1050.jpg)
![ポルトローナ「CHAISE MORELATO」Mario Bottaデザイン](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_003-340x510.jpg)
![ライブラリー「CODEX」Piero Lissoniデザイン。トネリコ材を黒く染め、扉は赤にして“コード”模様を描いた。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_004-700x466.jpg)
![コーヒーテーブル「Dartagnan」Maurizio Durantiデザイン](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_005-340x510.jpg)
![マルチコンポーネント「Ceppo」Marco Fiorentinoデザイン。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_006-340x510.jpg)
Carl Hansen & Son カール・ハンセン&サン
半世紀以上を経過してなお
新鮮さを失わないミニマリズム
北欧デザインの老舗格として知られるカール・ハンセン&サン。シンプルななかにも独特のクリーンなラインを描くキャビネットからスタートしたこのデンマークのメーカーは今回、ハンス・J・ウェグナーの生誕100年を記念するモデルとして1955年試作のプロトタイプを製品としてローンチさせた。木とスチールを組み合わせ、スチールのリニアな美しさと木の柔らかな表情を融合したCH88シリーズは、60年近く昔のデザインとは思えない新しさを醸し出す。また、同じく100周年記念特別コラボレーションとしてポール・スミスデザインのファブリックを使用したバージョンも発表。カラフルなテキスタイルをいとも容易く包み込む往年の名デザインの懐深さを感じさせるシリーズとなった。
Giorgetti ジョルジェッティ
無限に広がる木の可能性を
円熟の技術で多彩に繰り広げる
ミラノの北西、木工家具からスタートしたメーカーが点在するメダにあって、円熟の技術と洗練のスタイルを発信するジョルジェッティ。いわゆる“大人”なデザインで、イタリア人も「いつかはジョルジェッティ」と言うほどのハイクラスな製品ばかりである。当然、デザインはシック&エレガントだが、スノッブに走らないところが上手い。今回は、目立った新しい動きは見せていないが、より洗練の度合いを上げ、デザイン性の高いものほど技術の高さでその特異性を包み込んで、どこまでもエレガントな線を描き出していた。
![「Eva」Carlo Colomboデザイン](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_012-340x476.jpg)
![「Eva」Carlo Colomboデザイン](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_013-340x476.jpg)
![「Move」Rossella Pugliattiデザイン](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_014-340x476.jpg)
![「Move」Rossella Pugliattiデザイン](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_015-340x476.jpg)
VERYWOOD ヴェリーウッド
旬の若手デザイナーと
マスマーケットのコラボ
北イタリアの大手家具メーカー、ジェルヴァゾーニ・グループに属するヴェリーウッドは、ホテルやレストラン、クルーズ船向けのいわゆるコントラクト家具を手がけている。伝統の木工技術をベースに、斬新でポップなデザインを実現するのがセールスポイント。特に、世界で活躍する若手デザイナーの起用に熱心で、無難になりがちだったり、逆に極端なデザイン主義に走ったコントラクト家具とは一線を画すことをうたっている。軽快で楽しげなデザイン、低い重心の椅子やテーブルは一般住宅でも十分通用する普遍性を感じさせる。
![「Gerla」Lucidi Pevereデザイン。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_019-340x510.jpg)
![「Loop」Marcel Wandersデザイン。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_020-340x510.jpg)
Porro ポーロ
ウッド温故知新を掲げ、
技術と素材の粋を究める
昨年に引き続き、居間、寝室、ダイニングなど空間を自社製品でコーディネートした展示は、照明もポイントを絞り、シックかつラグジュアリーな見せ方で衆目を集めていた。ミラノの北、コモを本拠とする同社の目指すところはあくまでも大人のための成熟したエレガンス。今年は特にウッド温故知新をテーマに掲げ、忘れ去られていた伝統技術を積極的に採用し、木特有の美しさを追求したという。素材としても、オーク、桜、胡桃、楡、ユーカリその他多岐に渡り、それぞれの特徴を活かした自在な素材使いは見事である。
![ウォークインクローゼットのトータルコーディネート。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_022-700x466.jpg)
![チェスト「Maggio」Alessandro Mendiniデザイン。寄木細工の8段チェスト。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_0231-340x437.jpg)
![カップボード「Schermo」Alessandro Mendiniデザイン。「Maggio」同様、楡、アカシア、オークの寄木細工。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_024-340x437.jpg)
Riva1920 リヴァ1920
家具であると同時に彫刻アート
計算された“荒削り”が異彩を放つ
1920年代にリヴァ家が営む木工家具工房としてスタートし、無垢の木材にこだわった家具メーカーとして歩みを続け、3代目である現社長のもと独創的なデザインを取り入れた異業種とのコラボレーションを展開するようになってからは、木工家具界では異彩を放つ存在となった。今回は、ニュージーランドで泥の中から引き上げられた5万年前の巨木カウリが目玉。若手デザイナー発表会場であるサテリテの中央に据えられた、無垢のカウリを使った一枚板のテーブルは圧倒的な存在感を誇示していた。しかし同時に、木という自然が持つ温かみは人々に安らぎをもたらし、そこだけ時はゆるやかに流れているかのような印象を与えていた。
![コーヒーテーブル「Kava Coffee」Aleksander Mukomelovデザイン。中央のラインはコーヒー豆を、全体はふせたカップをイメージ。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_032-340x457.jpg)
![スツール「Temperino」Alessandro Guidolinデザイン。デザイナーの必需品“鉛筆削り”。身近で普遍的な道具のサイズ、使用目的を劇的に変化させ、遊び心と機能性を両立。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_033-340x457.jpg)
Drugeot Labo ドゥルジュ・ラボ
原材料、デザイン、製作まで
100%メイド・イン・フランス
フランス北西部の自然豊かな土地でほそぼそと操業していたキャビネット製造工場は、オリジナルデザインによって世界に発信するウッドファニチャーメーカーへと変貌を遂げた。家業を引き継いだ現社長は、原材料は地元産のオークと桜、製作は職人による手仕事にこだわりながら、それまでにはないデザイン性を追求したのである。強い主張は見せないが、軽快でどこかユーモラスなデザインは、饒舌なイタリアとも静寂の北欧とも違う、独自のアイデンティティを物語る。当初はデパートやデザインショップから声がかかり、そのうちにアンティークショップからも注文がきたという。どんな空間にも溶け込む不思議な力がこのブランドの武器だろう。
ICONS イコンズ
リユース&リサイクルで
木は何度でも生き返る
イタリアは石やレンガで家を作るが、家具は圧倒的に木材製である。使い続け、ぼろぼろになったら削って、あるいは分解してほかの家具に作り替える。古い戸板をテーブルにしたり、梁や柱も棚や椅子に姿を変える。そんな伝統をベースに、古さと新しさを混ぜ合わせた家具をリリースしているのが、イコンズ社だ。ヴェローナに本拠を置く同社は、同じヴェネト州にあるヴェネツィアのラグーナ(潟)に打ち込まれている水上道標の杭、ブリッコラの古材を利用した家具で知られる。水に浸食されたオークの表情を活かしたデザインはその木の辿った歴史を雄弁に語り、木という素材の生命力の強さに人は支えられてきたのだと実感する。
![「Millerighe」。アッシュ・ウッド材。4段引き出し。ミッレリーゲとは無数の皺の意。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_040-340x295.jpg)
![「Ganser」。ブリッコラ材そのもの姿をストレートに利用したスツール。ガンサーとは、引退したゴンドラ漕ぎのこと。](https://img.100life.jp/2014/04/140421_Salone_041-340x295.jpg)
ミラノ・サローネ特集、続きはこちら
ミラノ・サローネ特集 第1回「木とデザイン」
ミラノ・サローネ特集 第2回「イタリアデザインの未来」
ミラノ・サローネ特集 第3回「キッチンの可能性」
ミラノ・サローネ特集 第4回「イタリアン・キッチン」
ミラノ・サローネ特集 第5回「サローネ・サテリテ・アワード」
ミラノ・サローネ特集 第6回「サローネ・サテリテの注目作品」