Style of Life
多肉植物と暮らすシンプルな箱にアンティーク
豊かに佇む「小さな家」
温室を備えたくて郊外へ
多肉植物専門店「solxsol」の松山美紗さんは、昨年秋に一軒家を新築したばかり。
「温室を建てて苗を育てたかったので、広い土地を探したんです。見つけるのに2年かかりました」。
埼玉の自然に恵まれた立地。東京に通勤する夫を送り出し、1歳の長男を保育園に送ったら、毎日ハウスで多肉植物を栽培する。真っ白な四角い箱のような家のまわりでは、ハーブや野菜類も育てている。
「自然を身近に感じて暮らしたかったんです。今、庭仕事も楽しくて、多肉以外にも色々とやってみたくなりました」。
ハウスの仕事から家に戻ったときに上がりやすいように、玄関はモルタルで土間風に。アーチ型の仕切りの向こうにLDKがあり、窓の向こうには広々とした麦畑が広がる。
「初夏の頃は、麦が金色に輝いて本当にキレイだったんですよ。宮崎駿の世界みたいでした」。
窓からの景色が映える家
ル・コルビジェの「小さな家」が好き、という松山さん。直線的な線に囲まれた四角い白い家は、建築士にそのイメージを伝えて完成した。
「豆腐みたいだねって言われます(笑)。古くなっていけばいくほどよくなっていく、そういう家にしたいと思いました」。
こだわったのは、“自然をゆっくり眺めて暮らせる部屋”。レマン湖の景色が大きな開口部から取り込まれる「小さな家」のように、窓からの借景が目にまばゆい。
「間取りをどうしたらいいか思いつかなくて、とりあえずシンプルな箱を作ってもらいました。家族形態も変わってくるので、後から考えればいいと思ったんです」。
1階のLDKに、2階はベッドルームと今はクローゼットにしている大部屋が。後から仕切れるように電気の配線を考えてもらった。ざっくりした造りの中、細部にこだわりが感じられる。例えば、キッチン。
「白ばかりだとナチュラルになりすぎてしまうので、シンクはチャコールグレーのモールテックス仕上げにしました。ポイントで少し強いものを入れたかったんです」。
階段の手すりはオーダーで作ってもらった黒のアイアンで。ドアにはアンティークも採用。無垢のナラ材の床に自然素材の風合いが馴染んでいる。
月明かりが美しい寝室
2階のベッドルームも、横長の窓から周囲の景色が眺められる。カーテンはつけないのが松山さん流。
「今のところ不便ではないのでそのままにしているんです。夜は月明かりが美しいし、朝は日の光で目が覚めるんですよ」。
麦畑の向こうの木立ちのような茂みから、風に木々がそよそよとそよぐ音が聞こえ、自然との一体感が感じられる。アンティークばかりを揃えたインテリアも癒しのムード。
「昔から好きで買い集めていたものなんです。今も骨董市によく行きますよ」。
消毒液の匂いのするキャビネットは、松山さんが自らやすりをかけて色を落とし、まわりの雰囲気になじませたのだそう。
「古い時代を描いた映画や朝ドラを観るのが好きで。ストーリーよりも、小道具に興味があるんです」。
植物に囲まれて
水廻りも暗いのはNG。バスルームはガラス張りに、トイレには天窓を取り付けた。開放的な白い空間には、あちこちに多肉植物が置かれて、潤いを与えている。
「ここに置いたらどう育つかとか、実験的な意味もあるんです」。
ダイニングテーブルの上は、結婚指輪の代わりに買ってもらったというGRASのヴィンテージのランプに、黒法師、ハオルシアなどの多肉植物がよく似合っている。ここでコーヒーを楽しむのも日課。
「カフェが好きなのですが、なかなか行けないので家カフェのようにできたらいいなと思っているんです。仕事の合間にゆったりする時間が好きですね」。
好きなものに囲まれた暮らしの充足感が伝わってきた。