Design
ミラノ・サローネ特集2014 -2-進化を重ねて歴史となる
イタリアンデザインの未来
Bonaldo ボナルド
ほどよいデザイン性と多様性
絶妙のバランスで暮らしを彩る
イタリアの職人の凄いところは、技術向上はもちろんのこと、そこにオリジナリティをどう組み込んでいくかに腐心する点にある。ボナルド社は、金属加工の職人であった創業者が持ち前の創意工夫力で木やガラスといった異素材も扱う家具メーカーへと成長させたという、典型的な職人型企業だ。もとが職人だから、デザイン性と機能性の両立を目指すのは当たり前、あとはどんなデザインを採用し、どのようなライフスタイルを提案するのかでカラーが決まる。ボナルドの製品は、極端なデザイン性を追求することなく、あくまでもちょっとしたユニークさ、暮らしのなかにほんの少しユーモアをもたらすという路線を貫いている。見ていて楽しく、しかし気疲れしない、それがボナルド社製品の特徴だ。
Clei クレイ
理想的な子供部屋とは?
子供大好きイタリア人が出した答え
イタリア人は子供が大好きである。そんな彼らが本気で理想的な子供部屋とは何かを考えた結果が、クレイ社のYoungシステムだ。曰く、子供部屋とは単にスペースがあればいいというものではなく、そのスペースが目的(遊び、勉強、休憩等)によってさまざまに変化することが大切である。その変化を自在に、つまり、家具の組み替えが簡単にできたり、1つの家具が別のものとしても機能するようにシステム化したのが同シリーズである。一見して明るい色づかい、ポップなデザインはいかにも子供向けという感じだが、じっくり見てみると実に良く研究されていることがわかる。これを考えた大人たちこそ、子供のように目を輝かせながら仕事をしているのだろう。因に、大人向けのLivingシステムもあるが、色づかいはやはりヴィヴィッドだ。
Laurameroni ラウラメローニ
加工技術の高さを物語る
面のデザインバリエーション
エントランスに据えられた何本かの柱状のものは、果たして家具なのか単にオーナメントなのか。そう思って足を止めた人はすでにこの世界の虜になっている。ブースの中にはソファ、カップボード、照明などが一見するとばらばらのテイストで並んでいる。しかし、見ているうちに1つの世界観で統一されていることがわかってくる。デザイナーが“美しい”と感じた線や面が忠実に実現されているからこそ達成された世界観。そしてそれは同時に職人の手仕事による高い技術力の証となっている。北イタリア・コモ近郊でデザイナーが中心となって2000年に立ち上げられたラウラメローニ社は、当地の職人とともに孤高の美を追求するメーカーだ。
Moroso モローゾ
今年注目のデザイナーは
昨年のサテリテ出展者
ユニークな才能を持つ若手デザイナーを積極的に発掘することで有名なモローゾ。展示ブースはいつも最先端を知ろうとするデザイン学生や偵察の同業者でごった返す。さまざまなデザイナーが覇を競うさながら展覧会だが、そのデザインは共通して陽気で茶目っ気すら感じさせるのがモローゾらしさだ。お馴染みのデザイナーや過去の人気作品も並んでいるが、今年の目玉は、昨年のサテリテに出展していたヴェネツィアのデザイナー2人組によるソファ。サテリテは素朴な手作りから商品化即可能な完成度の高いものまで、言葉は悪いが玉石混淆な若手デザイナーの発表の場だが、そのなかから確実に面白いものを引っぱって来るのがさすがモローゾである。
Kartell カルテル
煌めくゴールドとテーブル回帰
プラスチックで表現する時代の気分
今年のカルテルは、一段とまばゆい光に溢れていた。アクリル樹脂特有の光沢を活かし「プレシャス・カルテル」と称して煌めく世界を作り上げてきた同社は、既存のコレクションのゴージャス感をさらにアップ、ゴールドやシルバー、ブロンズカラー仕上げの椅子、テーブル、照明などを多面展開。バブル時代よもう一度、というわけでもないだろうが、景気復活と現在世界経済を牽引する中国、ブラジルそしてアラブへのオマージュが感じられる。また、40年ぶりのテーブル回帰も今年の重要テーマの1つで、ミラノの有名シェフがイメージコンセプトを提供したコレクションは、カルテルの新しい一面を見せた。歩んできた道を振り返りながら未来を探る、それが創業65年を迎えたカルテルの節目の決意のようである。
Poltrona Frau ポルトローナ・フラウ
クラシック家具の老舗が挑む
名品へのあくなき改良
イタリアの最高級皮革家具メーカー、ポルトローナ・フラウ。厳選の素材、職人による手仕事をうたうメーカーは多いが、同社は呆れるほどにその姿勢を徹底し、それが他の追随を許さない高品質を生んでいる。そして、デザインテイストとしてはクラシックながら、常に見直しの手綱を緩めず、名品と言われるシリーズにも改良をほどこしてより高い完成度を目指す。今回は、50年代ポストモダン黎明期を体現するタワーシェルフ「アルベロ」、アームチェア「カヴール」、「DU30」などが改良復刻版として並んだ。そのほか、リビングソファやベッドなど、シンプルで軽やかなデザインの新作も登場。奇を衒わぬ方向性は変わらないが、進化する老舗の風格を指し示していた。
Cappellini カッペッリーニ
テーマはアウトサイダー
家具界のストリートアートを提案
暗く落とした照明のなかに、国や時代を感じさせない無機質な建物の部屋が幾つか並び、それぞれの部屋はどこか南の国をイメージしたプリミティブな色に染められている。絞った光は、ブースの色に溶け込んでだ家具を照らし、家具であるはずなのに、もう1つ別の存在感を持った異質な美しさを引き出している。カッペッリーニの今年のテーマはストリートアート、脚光を浴びる前の原石のような可能性を秘めたデザインの提案だ。アウトサイダー的なものが、ほどなくしてモードとなり、やがてスタンダードとなるかもしれないが、まずはそれを見いだして呈示することが我々の役目である、というのが、イタリアンデザインを牽引してきたカッペッリーニが自負するところだ。
Driadeドリアデ
強い視覚的インパクトを求め
過去に根ざし未来を見つめる
先鋭的で強烈な個性を放つデザイン家具、といえばドリアデ。存在するだけでその場の雰囲気を決定するほどのアクの強さは、好むと好まざるに関わらずデザインというものの本質を物語る。自らを“美学のラボラトリー”と称し、1968年の創業以来、究極のデザイン美を求めて実験と研究を重ねてきたという姿勢は今も変わらない。今年のその端的な例は、アレッサンドロ・メンディーニの三原色を用いたシェルフ「ピッコリ・パラッツィ」だろう。部屋のなかに小さなパラッツィ(屋敷)を建てるという発想は、子供の頃に遊んだテントや建物を模した遊具を思い出させる。ともすれば幼稚なアイディアを、そうと断罪せずに大人の視覚センスに耐えられるまでに磨き上げるところがドリアデの“優れた”独善である。
ミラノ・サローネ特集、続きはこちら
ミラノ・サローネ特集 第1回「木とデザイン」
ミラノ・サローネ特集 第2回「イタリアデザインの未来」
ミラノ・サローネ特集 第3回「キッチンの可能性」
ミラノ・サローネ特集 第4回「イタリアン・キッチン」
ミラノ・サローネ特集 第5回「サローネ・サテリテ・アワード」
ミラノ・サローネ特集 第6回「サローネ・サテリテの注目作品」