Design
ミラノ・サローネ特集2014 -5-若手デザイナーのコンテスト
サローネ・サテリテ・アワード
サローネ・サテリテは、若手デザイナーたちの発表の場として17年前に始まった特別会場で、ここだけは無料で入場することができる。この会場で開催され、今年で五回目となるサローネ・サテリテ・アワードとは、35歳以下の優秀なデザイナーを発掘する目的で設立された報奨で、シンプルで鋭い感性が表れ、発想者のパワーが感じられるとともに実用性にも優れているものが1位から3位まで選ばれる。今年は102組が参加し、1位がイタリア、2位がフランス、3位にアメリカの作品が受賞。また、佳作として、日本とルーマニアからの作品が入賞した。
From フロム
サローネ・サテリテ・アワード1位を獲得したのは、イタリア・パドヴァを拠点とするフロム(Cesare Bizzotto)の「ヴォルト・ランプ」。一本の棒状のLED照明で、天井から吊るしたケーブルで本体が支えられると同時に電流も得て光る。本体を回すことで光の向きが自在に変えられ、消す時はケーブルを少しずらす仕組み。
Arturo Erbsman アルトゥーロ・エルブスマン
サテリテ・アワード2位もLED照明で、フランスのアルトゥーロ・エルブスマンの作品。光が水の状態によってさまざまに表情を変えるところに注目した「Water lamps」シリーズの1つ「Atmos」が受賞した。ガラスドームの中に閉じ込められた水が、照明の熱によって気化し、ガラスの内壁を覆う細かい結露となり、やがて液体に戻っていく一連の動きが光の模様となって現れる仕組みだ。
Avandi アヴァンディ
サテリテ・アワード3位は、アメリカを拠点に活躍する26歳のベルギー人女性アヴァンディ(Ariane van Dievoet)の作品。キッチンで女性が使うことを考えた小さくて機動性に優れたカエデ材の梯子で、カウンターにかける上部と床面につく脚先は樹脂ゴムで覆って滑り止めとし、体重をかけることによって安定する設計。普遍的な道具をこまやかな観察をもとに改良した点が評価された。
YOY ヨイ
サテリテ・アワード佳作に選ばれたのは、日本のデザイナーYOY(小野直紀、山本侑樹)の、テーブルから“突き出た”トレイ。落ちそうで落ちないシュールな雰囲気が見る者を引きつける。裏面に仕組んだクリップがテーブルを掴むというシンプルな構造ながら、日常のちょっとした不安を遊びに転じるアイディアがユニーク。
Ruxi Sacalis ルキシ・サカリス
もう一つの佳作は、ルーマニアの女性デザイナーによる素焼きの器。耐火れんがに使われるシャモットという粉末を土に混ぜ込むと、焼き縮みを防いで強度が上がり、また、釉薬を使わずとも一度の焼成で食品や液体の保存性が高まる性質を生かした。故国ルーマニアで建築を学び、イギリスで歴史建造物保護の学位を取った彼女のプロダクト精神の核は伝統と現代感覚の融合だという。
Vito Colacurcio ヴィート・コラクルチョ
額縁が自在に曲げられるとしたら。そんなふとした発想を形にすると思わぬバリエーションを楽しめた、という感じの作品。額縁に何本かの刻みを入れて円柱や壁の曲がり角に沿うようにする。額縁のどの部分を“曲げる”かによってなかの絵や写真が違った表情を見せる。ファッションを中心にインテリアプロダクトや広告デザインまで手がけるミラノのデザイナーの、いたずらっ子のようなきらきらした目が印象的だった。
KAPPES カッペス
展示ブース、サテリテ・アワードの候補作展示コーナー、どちらの場でも最も注目を集めていた。真っ白な浅い碗のなかを水が大きさをさまざまに変えながら玉状になって、時には筋を描きながら転がっていく。なにげなく見ているうちにだんだんとその軌跡に魅入られてしまう。撥水性の高い塗料を塗った碗の内側に流し込んだ水はコンピュータのプログラムに従って移動を続ける仕組み。
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ミラノ・サローネ特集 第1回「木とデザイン」
ミラノ・サローネ特集 第2回「イタリアデザインの未来」
ミラノ・サローネ特集 第3回「キッチンの可能性」
ミラノ・サローネ特集 第4回「イタリアン・キッチン」
ミラノ・サローネ特集 第5回「サローネ・サテリテ・アワード」
ミラノ・サローネ特集 第6回「サローネ・サテリテの注目作品」