Design
ミラノ・サローネ特集2014 -6-サローネ・サテリテに現れた
斬新な道具たち
前回に引き続き、サローネ・サテリテでの出品作品の幾つかをレポートする。この若手デザイナー限定の展示会場は、それぞれが小さなブースに仕切られた中で作品を紹介しているのだが、大企業による多額の費用をかけた展示とはまったく雰囲気が違い、いかにも手作りのどこか学園祭的なムードで見る側も楽しめる。なかにはアートインスタレーション的な作品もあるが例外的で、ほとんどは実用を意図し、機能性とデザイン性の折り合いに知力を注いだ“道具”である点が特徴だ。
Eugenia Minerva エウジェニア・ミネルヴァ
幼い頃から身の回りのあらゆる物体に興味を持ち、紙を使ってその形状を再現してきたというイタリア人女性デザイナー、エウジェニア・ミネルヴァ。彼女にとってデザインとは、物体に言葉を与え、暮らしのなかに溶け込み、人を楽しませるものであるという。出展作品のトータルテーマは「Trasparenze」(透明さ)。光を通す物体のさまざまを形にした。
Alessandro Bove アレッサンドロ・ボヴェ
機械に魅かれ、ロッククライミングが趣味というローマ生まれの31歳。この2つの“好きなもの”は互いになんの関係もないように思えるが、アレッサンドロ・ボヴェにとっては素材と構造についてさまざまなインスピレーションを与えてくれる源だという。シンプルな美しさをまとった使い勝手の良いデザインを目指している。
Ledwork レッドワーク
本体は、手のひらほどの大きさの充電式消波ブロック型LEDランプ。ただ光るだけだったり、色が変化するだけなら面白くない。人や有機物のように互いに影響を与えあう関係にしたらどうなるか。そんな発想から生まれたのがこのプロダクトだ。磁石によって接合すると互いの色を認知し、その色に染まったり、融合して別の色に変化する。出品者はオランダとベルギーの4人の男性から成るインタラクティブ・アート&アーキテクチャー集団である。
Leko レコ
世の中モノがあふれているのに、まだモノは必要なのだろうか。レコのデザイナー、レアンドロ・レッチェーセの答えは、「それが価値あるものだったらイエス」。その価値とは、見過ごせないほどの特徴があり、誰もが使いやすいものであること。さらにその上、美しいものであること。「世の中、こんなに動いている。その流れに逆らって止まる必要がどこにある?」だから、デザインの世界は常に前進していくのだという。
Nolii
どこかアジアの伝統文様を思わせる不思議な図形。テーブルの上に並べられた4つの平たい木片は、コンピュータグラフィックで2Dもしくは3Dの線を変化させることによって生じた意匠を実体化したもの。ガラスのカラフェや花瓶を敷くポットホルダーだそうだが、そのままオブジェとして眺めていたくなる。NoliiはCGデザインを専門とするブラジルの建築デザイナー2人組だ。
Studioventotto ストゥディオヴェントット
椅子は座るだけではなく、時には高いところのものを取る時の踏み台としても使う。しかし、それは本来の目的ではない使い方ゆえ、落ちて思わぬ怪我をすることもある。ならば、最初から2つの使用に適うつくりにすればいいのだ。また、傘立てというものは一般的に長い傘専用に作られている。ところが、多くの人は折りたたみ傘も使う。長い傘も折りたたみ傘も両方収納できるものが必要だ。といった具合に、日常の些細な、しかし改善されれば暮らしやすくなる点に注目し(コストにも注目して)デザインするのが、イタリア人男女2人組によるストゥディオヴェントットのポリシーである。
Studioavni ストゥディオアヴニ
硬い金属の中に儚い流動を感じ、柔らかい布に確かな骨格と形を見いだす。インド出身のアヴニ・セイパルは手から伝わる感触を重視し、有機的また幾何学的な立体感を持つテキスタイル、家具、照明などをデザインする。そしてそれを伝統工芸の技と現代の最新技術の両方を駆使してプロダクト化するのだ。金属も布も、あらゆるマテリアルは時間とともに変化し、味わいを増す。インドという悠久の国ならではの発想が彼女のデザインの根底にある。
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ミラノ・サローネ特集 第1回「木とデザイン」
ミラノ・サローネ特集 第2回「イタリアデザインの未来」
ミラノ・サローネ特集 第3回「キッチンの可能性」
ミラノ・サローネ特集 第4回「イタリアン・キッチン」
ミラノ・サローネ特集 第5回「サローネ・サテリテ・アワード」
ミラノ・サローネ特集 第6回「サローネ・サテリテの注目作品」